第4章 ヴァンパイアの気まぐれ
「でももう真夜中を過ぎてるよね?
今から帰るのきついんじゃない?」
ルシアリアが気を失っている時間を考えると
とうに次の日になってるはずだ。
ここがどこだかわからないが暗い中を
帰るのは危険であるのはわかる。
「というか、助けに来てくれたのすごく
早かったね!ヴァンパイアは助けにくるのは
早くて明日の夜って言ってたのに」
「あぁ、隣町に行くと守るはずの対象者
がいなくなってるし、その頃ルアに
付けていた印が急にあり得ない速度で
移動したから気配を追ったら町に
わりと近い山奥で止まったからすぐに
駆け付けたんだ。ヴァンパイア絡みとは
思ってなかったけど…」
わりと近いと言っても屋敷の窓からは
明かりの一つさえ見えない山の中である。
どれだけ、急いで駆けつけてくれたのか
わかって涙がまた出そうになる。
「それでも恐い思いをさせてごめん」
「どうしてフォルトが謝るの?
助けに来てくれてありがとう。
あっ!手の甲、怪我してる」
「あれ?いつの間に…これくらい大丈夫」
「ダメ。見せて」
フォルトの手を取りそっと手を重ね
力を注ぐ。
すると優しい光が出て傷が治る。
「これで大丈夫!」
「お人好し。これくらい大丈夫なのに。
俺はルアの傷の方が気になる」
ヴァンパイアに噛まれた傷が残っていたのが
気になったし、悔しい気持ちがぶり返す。
「他の人の傷なら魔法で治せるけど、
自分には効かないからなぁ。そのかわり、
他の人より治るのずっと早いから大丈夫だよ」
現にシーツから出ている腕の噛み跡は
もう消えかけている。
「それでも、俺はルアに傷ついて
ほしくない」
「うん。自分でも気をつける!」
「そうして。じゃないと…俺が
おかしくなるからね」
「何それ。大丈夫だよ」
「それより、外暗いけどやっぱり帰ろう。
ここの後処理はギルドにお願いするし、
こんなところじゃルアを休ませて
あげられない」
「でも、まだ貧血でちょっと動けないかも…」
「大丈夫。俺が運ぶから」
「いや、私重いし暗い中、危険じゃない?」
「大丈夫。俺、強いから」
そう言ってシーツに包まれたルシアリアを
抱え、問答無用でヴァンパイアの屋敷を出た。