第4章 ヴァンパイアの気まぐれ
ヴァンパイアは自分の進化を想像し
ほくそ笑むも次の瞬間ゾッと悪寒がして
振り返ったら世界が歪んで見えた。
見えたその先には、首から先
頭のない自分の体が目に映る。
「な…に…!?」
ヴァンパイアは首を切られても体を無数の
コウモリに替えられるので死にはしない。
ただ、ヴァンパイアに何が起こったのか
理解が追いつかない。
無数のコウモリが集まり、またヴァンパイアの
形となる。
そしてヴァンパイアが目にしたのは
先程まではこの部屋にいなかった存在、
フォルトだった。
「貴様!何者だ!」
不意打ちを喰らったとはいえ一度は
首を切られたのだ。怒りがフツフツと
湧くヴァンパイア。
フォルトも十字架に裸で括り付けられ
気を失っているルシアリアを見て
怒り狂いそうだった。
直ぐ様駆け付けたいのをグッと
堪えてヴァンパイアと対峙する。
パチン とフォルトが指を鳴らすと
部屋全体に結界が張られた。
「これでおまえは俺から逃げられない。
経験からして逃走はヴァンパイアの
常套手段だからな」
「逃げる?人間相手になぜ私が
逃げねばならないのですか!
戯言を!」
怒りを逆撫でされ先手必勝とばかりに
フォルトに向かって魔法攻撃を放ち
短くした爪を元の長さに戻して
フォルトを切り裂こうと飛び出す。
「遅い」
ヴァンパイアの攻撃が尽く弾かれ
躱されていく。
今までに味わった事のない屈辱と
ここから逃げないといけないのではという
焦燥感に駆られる。
「こんなはず…こんな事ありえない!
私はこの儀式でさらに進化するのだぁ!」
自分の中の全ての魔力を注ぎ込みフォルトに
向かって放つ。
フォルトはそれを難なく消し去り
ヴァンパイアに近づく。
「これでおしまいか?」
ヴァンパイアは冷や汗が止まらず逃げる事も
叶わず最後の望みとルシアリアを
人質にしようと動くがそれを
フォルトが許すはずもなく
見えない結界に阻まれる。
「死して償え」
結界をさらに縮小させて炎の魔法を発生
させる。炎は大きくなりヴァンパイアを焼く。
魔法で消そうとしても消えず為す術もない。
あっという間にヴァンパイアの全身を炎が
包み断末魔と共に焼き尽くした。
誰もが手こずったヴァンパイアをフォルトは
一人で難なく討伐したのだった。