第4章 ヴァンパイアの気まぐれ
「ここまで私の足を煩わせた事の
代償に今日すぐに連れて行こうと
思ったのですが気が変わりました」
その言葉に、明日まで待って一時引いてくれる
のかと思ったが次の言葉に冷水を
浴びされた気分になる。
「その娘さんは止めて、
あなたにします」
「……は?」
言っている意味が飲み込めないうちに
ヴァンパイアが目の前に来る。
目の前に来たのが一瞬でルシアリアは動けない。
「あなたの方が美味しそうだ」
ニヤッと笑いルシアリアの首の後ろを突き
気絶させて軽々と肩に担ぎ誰も抵抗
する間もなく教会から消えてしまった。
ルシアリアが気付いた時には知らない場所にいた。
どこかの古い屋敷の一室のようで
高級感のあるテーブルセットに大きなベッド
などが目に入る。
「…ここは」
しかし動こうとしても体を自由に動かせない。
自分の手を見ると、この部屋に似つかない
大きな十字架の彫刻物に両手を広げて
縛り付けられていた。
サッと血の気が引き、叫ばないように
歯を食いしばる。
「おや、気がつきましたか。あの娘と
引き替えに良いものを見つけました」
目が覚めたのに気付くとルシアリアに近づき
顎を掴み顔を確かめる。
その手は氷のように冷たくて悪寒が膨れ上がる。
「そんなに怯えなくてもすぐには
いただきませんよ。…ちょっと
味見をするだけ…」
動けないルシアリアの顔を横に向けると
白い首元に鼻を寄せる。
「あぁ、なんていい香りなんでしょう。
あの娘より魔力も高そうだし、その負けん気の
強い目を甚振るのはもっと楽しいでしょうね」
怖気づくまいと睨んでいたのが仇となった。
逆に喜ばせてしまったがへりくだるわけには
いかない。
「触らないで!」
手を振り払おうとするが掴まれた顎は
固定されて動かせない。
ベロン
「ひっ」
大きく首元を舐められた。その感触に
冷や汗が噴き出す。
「あぁ、美味しいですね。大丈夫ですよ。
痛くはしません。ただ気持ち良くなるだけ。
あまり跡も残らないよう大切に扱って
あげますからね」
次の瞬間、カパッと口を大きく開き
ルシアリアの首筋に噛み付いた。
「…っ あっ、 きゃあぁぁ」
耳元で啜られる音が大きく響く。
しかし次に感じたのは痛みではなかった。