第4章 ヴァンパイアの気まぐれ
「お願い!助けてください!!」
必死の形相で駆け込んで来たのは
ルシアリアとさほど年の変わらなそうな
この村では見かけない少女だった。
「そんなに慌てて一体何事ですか?」
教会にいた神父が少女を心配し駆け寄る。
ルシアリアもただ事ではないと感じ一緒に
いた子供達を奥の部屋に避難させる。
「私、隣町の領主の娘のライラって
いいます。
最近、町にヴァンパイアが現れて人々を
襲い始めて……止めて欲しかったら
領主の娘の私を生贄に渡せって言ってきて…」
目にいっぱい涙を貯めて悲痛な叫びで訴える。
「町のギルドは冒険者を派遣するまで
言われるとおりにしていてくれって
助けてくれなくて…ヴァンパイアに
引き渡される日はもう、明日なのに…
…恐くて、耐えられなくて…」
そこに誰もが凍りつくような冷たい声が
響いた。
「おやおや、取引の娘が町を出たから
逃げるのではと思って追いかけてみれば
案の定ですね」
誰も気付かないうちに教会の中に
一人のヴァンパイアが静かな笑顔を携え
入り込んでいた。
突然、現れたヴァンパイアが恐ろしく
誰も動けない。
「いけませんよ~。取引に応じなければ
あの町の人々を襲ってしまいますよ?
それをあなた一人で我慢してあげようと
私の気遣いを無下にしたら良くないのでは?
こんな小さな村に助けを求めて端ない。
さぁ諦めて私の元に来るのです」
冷たい笑顔が更に深みが増して
ライラに近づく。
ライラは怖くてカタカタと震え出す。
そんなライラの前にルシアリアが
庇い出た。
「引き渡しは明日ですよね?
お引取り願います!」
両手を広げてライラの前に
立ち塞がった。
フォルトが受けていた依頼はきっとこれで
ライラがこの村に逃げて来たので
すれ違いになったんだろうと考える。
それならこの娘を守る事はフォルトの
手伝いになるだろうと自分を奮い立たせた。
「これはまた、強気なお嬢さんで。
…おや?……そうですね」
ヴァンパイアはルシアリアを見て
ふと止まったかと思うとまた笑顔を
浮かべる。