第3章 ヤキモチ
ルシアリアの手を取ろうとした若い冒険者の
首筋には大きくてよく研ぎ澄まされた剣の刃が
添えられていた。
「俺の女に触れるな」
そう言って剣を構えていたのはもちろん
フォルトだ。
まさかこんな宴の中、刃を向けられるなんて
思ってもなく直ぐ様、後退り青ざめる。
「なっなっ、なんだよ!まだ何もして
ねぇだろ!」
「ちょっと待て!そいつ最短でS級に駆け上った
やつじゃないか!?」
「なんでそんな奴がこんなところで…」
フォルトに反論しようとしたが、
フォルトの一睨みで情けなく怖気づいて
黙り込む。
その姿を一瞥してルシアリアの手を掴んで
フォルトは自分の為の宴も放置して
その場を後にした。
「恐っ!あいつルアの事になると
本当、見境ないんだから」
ナーナは二人が去った方を見ながら
我関せずという感じで食事を再会した。
そしてその場に残された村の人達が冒険者達を
宥めていた。
「あんた達、来たタイミングが悪かったね」
「この宴は今日この村に帰ってきたあいつの
為に開いたんだよ」
「ルシアリアに声を掛けたのが運の尽きだね」
「あいつ、村長の息子と同い年なのを
いい事に村にいない時もルシアリアに悪い
虫がつかないよう見張らせてたんだよ。」
「今回のは忘れて、ほら!
食事を楽しんでおくれ」
村の人達のいつもの歓迎に何とか気を
取り直し冒険者達は落ち着いてくれた。
フォルトはルシアリアの手を取ったまま
ズンズン歩いて村の端まで来ると
クルッと振り返った。
「恐がらせてごめっ……どうして
そんなに顔が真っ赤?」
フォルトはやり過ぎてしまったと謝ろう
としてルシアリアの顔が真っ赤な事に戸惑う。
「だって…フォルトが、俺の女って…
みんなの前なのに…嬉しくって」
他の誰かがいたら反応するとこ、そこ!?と
突っ込みたくなるだろうが、ここには
突っ込み役はおらず。
顔がさらに熱くなり照れているルシアリアに
フォルトは自分の中の理性が崩れて
いく音を聞いた。
手を握ったまま村から出て
森の中に入って行く。
「フォルト?どこ行くの?」
フォルトは何も言わずもっと森の奥に
入って行った。