第3章 ヤキモチ
そんな他愛もない話をしてる向こうでは
フォルトが女の子に囲まれたままだ。
自分の事を好きでいてくれるのを
わかっていても女の子達に囲まれている
のをずっと見てると何だか胸の奥が
モヤモヤしてくる気がしてルシアリアは
食べ終わった皿を持って立ち上がる。
「私、皿を片付けてくるね!」
突然立ち上がって慌ててこの場から
去ろうとする。
「あ、ルア!ちゃんと前見て行って!」
「わかってる〜」
面倒見のいいナーナは能天気な親友を
見送りながら、フォルトを睨む。
フォルトはその視線にすぐ気付いたものの
何事もなかったように目を反らした。
「本当、ルア以外には冷たいんだから」
ベーッと舌を出してから、気持ちを切り替える
べくナーナは目の前の食事を楽しんだ。
ルシアリアは自分の気持ちを落ち着かせる為に
食器を片付けてからナーナの所に
戻ろうとしていた。
「あれー?今日は何かのお祝い?
それとも俺達の歓迎会?」
みんなが楽しんでいるところに入り込んで
来たのは若い男の冒険者3人だった。
村と村の間が遠く宿屋もあまりなく
夜に近づいてきたのでこの村に泊まる
ところがないか探しにきたのだろう。
冒険者は人々を困らせる魔物を討伐
してくれたり、困ってる問題を片付けて
くれる何でも屋のような存在で通常なら
歓迎されていただろうが、タイミングが
悪かった。
冒険者ならフォルトが帰ってきてくれたし、
祝宴をみんなで楽しんでる時であり
誰も相手をしようとしなかった。
「何々?みんなノリ悪いんじゃない?」
「冒険者様だよ?ほら、俺達にも何か
食べ物持ってきてよ」
好き勝手に言って他の人が座ってるのを
追い出し一つのテーブルを占拠する。
そこにルシアリアが通りかかった。
「ねぇねぇ君、かわいいね。お酒の相手
してくれない?」
「え?私?いえ、お断りします」
突然声を掛けられたが、頭の中がフォルトで
いっぱいだったルシアリアはすぐさま断る。
「はぁ?声掛けられて喜ぶところだろ?」
怒ってルシアリアの手を取ろうとしたところで
首筋がヒヤリとして、動きを止めた。