第17章 蜘蛛の残党
ルシアリアに詰め寄るジークの襟首を
フォルトが掴み後ろに引っ張る。
「ただの恋人じゃない。婚約者だ。
近づくな」
「婚約者…」
そう呟いたのは二人。一人はジーク。
事実を受け取り難くショックを受けている。
そしてもう一人はルシアリア。
プロポーズを受けたとはいえ初めての
婚約者という響きに感動してしまったのだ。
「というわけで諦めろ」
ルシアリアの肩を抱きジークに見せつけた。
「そんな…もう式の日取りなんかも
決まってるのかい?」
見るからに大ダメージを受けているような
ジーク。
「いや、まだプロポーズしたばっかりで…」
「僕にもチャンスをくれ!出会うのが少し
遅かっただけなんだ!」
フォルトに詰め寄るジーク。
「そんなの無理に…」
「お願いだ!諦めきれないんだ!
こんなに胸が熱くなるなんて生まれて
初めてなんだ」
断ろうとしてるのにグイグイくるジーク。
「そうだ!ルシアリアをかけて勝負をしよう!
今から王都に向かい先に着いた方が
勝ちというのはどうだ?」
「は?」
「フォルトも王都に呼ばれてるから
ちょうどいいだろう?僕が先に着いたら
僕の事も視野に入れてほしい」
「ルアは景品じゃないんだぞ。そんな
勝負に意味はないだろう」
「そうでもして僕はルシアリアに振り向いて
ほしいんだ!」
バチバチと二人の言い合いが止まらない。
「ルアは渡さない」
「少しチャンスをもらえれば振り向いて
もらえる自信もあるよ」
「どこからくる自信だよ。人の婚約者を
横取りしようなんて何様だよ!」
フォルトが叫んだ時、再び扉が開いた。
「王子殿下!ご無事ですか!?」
入ってきたのは王国騎士団の一人。崖から
落ちたジークを探しに来たのだろう。
それより彼はなんと呼んだ
「王子殿下…?…え…王子…様?」
「王子殿下!ご無事で良かった。お姿を
見るまで生きた心地がしなかったです」
騎士はジークに縋り付き、おいおいと泣く。
「…おまえ、王子だったのか?」
「…もう隠しておけないな…。僕は
ジークベルト・クラウン。
クラウン王国第2王子だ」
王子様みたいだと思っていたが本当に
王子だった事にルシアリアは驚いたし
フォルトも知らなかったようだ。