第16章 小さいな呼び声
森に踏み入れるとさらに新鮮な
緑の鼓動が感じられた。
声は小さいが高くてかわいい女の子の声
のようだ。声に導かれ森を進むと大きな
樹木の根元に光る塊が二つあった。
ゆっくり近づき目を凝らすとその光は
手の平サイズの女の子二人で妖精だと
わかった。背中に透明の羽が生えている。
妖精の存在は聞いた事があったが
実際に見るのは初めてだ。
妖精二人はルシアリアに気付くと警戒して
黙ったがその場を動かない。
一人は怪我をしているようだ。
「怪我をしてるの?」
「!!あなた、私達が見えてるの?」
黙ったのは姿が見えていないと思って
いたからのようだ。
普通なら妖精が見える人間など
滅多にいない。いても幼い子供が
時々見えるくらいだ。
大人で妖精の姿が見えるのは本当に
稀であるらしい。
「あなた達の事、見えてるよ。
普通は見えないんだね。
…そっか、龍眼のおかげかも」
警戒する妖精を刺激しないように一定の
距離を保つ。
そして妖精が見えるのはきっとギーニの
加護のおかげだろうと思い当たる。
「龍眼?どうして人間が…」
怪我をしているもう一人を庇い果敢に
尋ねてくる。
「ギーニに…ドラゴンに加護を
もらったの。そのおかげで龍眼が
使えるようになったの」
妖精は自分達が見える人間がいると思って
なくて戸惑う。後ろの怪我をしている
妖精はかなり重傷なようで木に身を
預けて横たわっている。
「怪我をしているね。大丈夫?
今治すからね」
「あなた治癒魔法が使えるの!?」
返事のかわりに手を伸ばし治癒魔法を
かける。優しい光が灯り消えた時には
怪我が治っていた。
「…すごい!……傷が…治った…」
目の前で見る見るうちに深い傷が
消えていった。信じられないと
いうように自分の体を確かめている。
木に預けていた妖精は体を起こし
ルシアリアを見つめてくる。
怪我をしている妖精を庇っていた妖精も
擦り傷があったが一緒に治ったようだ。