第16章 小さいな呼び声
ドラク村に滞在して一週間。
フォルトはミルガルド大森林に魔物討伐へ
ルシアリアは教会に行く日が続いていた。
ギーニが村を壊した際に怪我をした人達は
皆治ったのだが、ミルガルド大森林で
大量に蜘蛛の魔物が発生しているようで
怪我人が後を絶たない。
ミルガルド大森林の北部には王都
クラウン王国があり、クラウン王国にも
魔物討伐の要請を出しているらしい。
ルシアリアの治癒魔法は大いに役に立ち
どんな怪我もたちまち治すその治癒の力に
皆が感謝していた。
人が人を呼び治療してもらいたい人が
どんどん増えていったが
救いを求める人達を助けるのは
とてもやりがいがあった。
今日も朝からたくさんの人が訪れ
治癒をして昼過ぎになる。
やっと一波すぎて休憩に入り
教会の裏手にこっそり一人で行く。
教会は人の出入りが激しいしたくさんの
人がいると気も抜けないので
息抜きをしに外に出たのだ。
治癒師は怪我や痛みは治せるが
病気までは治せない。羨望の眼差しで
やってきてガッカリさせて帰らせる事も
少なくない。
どうしようもないとわかっていても
心苦しくて切ない。
教会の裏はミルガルド大森林だ。
フォルトが毎日魔物討伐に行っている森だ。
やっつけても後から後から蜘蛛の魔物が
湧き出てくるらしくフォルトが
ボヤいていた。
緑が深くとても広大で鳥の囀りが
響いてくる。
鳥の囀りと緑の深い匂いに
だんだん心が落ち着いてくる。
蜘蛛の魔物が発生してるとは
思えない程静かで普段と何も
変わらないように見える森。
その時、鳥の囀りに混ざって別の声が
聞こえてきた。
「……けて、…助け…て…」
ハッと顔を上げ声の主を探す。
しかし近くには誰も見当たらない。
声は森の奥から聞こえてきたようだ。
助けを求める人がいるなら助けたい。
その一心でルシアリアは森に踏み入れた。