第2章 ゆれる気持ち
今日は、待機室に、
よこちゃんという30代くらいの嬢が
赤ちゃんを連れてきていた。
みんな、可愛い!と叫んで小さいその手を触っている。
わたしは昔から赤ちゃんを可愛いとあまりおもったことがなかった
わたしは遠巻きに、その特有の動きをする小さな存在を見ていた。
分娩が大変だったとか、母乳がどうのとか、
よこちゃんは声高に説明する。
整形した鼻や目が見開いたりするので少し怖い。
ぼんやりと妊娠出産子育て。
女性のステージが上がることを考えていた。
わたしはそれになりたいのかな、なりたくないのかな
自問自答したけどわからない。
今日は中村さんはなんだか、イライラしていた。
いつも通りプレイをしたあと、
中村さんは
いつまでもこんな仕事してたら、堕落するよ。
もっと将来のことを考えたほうがいいと言い出した。
わたしは、そうだね、とだけ答えて、
少し微笑んだ。
帰りの電車、また、
隣の席で赤ちゃんを見かけた。
その小さないのちは、お母さんの
指先を掴んだり、引っ張ったり、舐めようとしたりしていた。
純粋な生命力のパワーにわたしはまた、圧倒された。
わたしは寂しくて悲しい気持ちになってしまった。
自分の育ちのことを少し思ったけど、
思い出しても仕方のないことなので考えるのをやっぱりやめた。