第1章 やさしいきもち
わたしは昨日から肩が凝って仕方なかった。
放置していたら、肩が岩みたいになって、マッサージに行ってもとても治らないようになっていた。
待機室で、リコちゃんが心配してくれた。
リコちゃんは店で人気の嬢。
わたしのお客さんが接骨院やってるよ。と
名刺をくれた。
新宿にあるので遠くない。
リコちゃんはかわいい顔でニコッと笑って
次のお客さんの元に向かって行った。
わたしは藁にもすがる思いで接骨院に行った
「平田 ゆのさん」
綺麗な、でも殺風景な待合室で名前を呼ばれた。
さわやかな声だなと思った。
医者の診察後、
マスクをしたその、男の人がわたしを案内した
桑原 大樹 首から下がる名札に書いてあったので、
リコちゃんのお客さんだ。
色が白くて、痩せていて、骨張ってる。
イメージと違う…もっとおじさんだと思ったのに。
年齢は30代くらいなんだけど、まとう雰囲気が、
すごく若くて、
なんというか、 ぴゅあ だと思った。
わたしはワタワタと緊張しながら、椅子に座る。
「少し背中を出してください。
赤外線のレーザーを当てますから。」
わたしは、お店では少しも恥ずかしくないくせに、
おずおずと、
ボタンを外してはだけさせ、肩を見せた。
桑原さんは、私の肩を優しくふれる。
わたしはなにか繊細な器具にもなった気がして、こそばゆいような嬉しいような気持ちになった。
ペン型の赤外線のレーザーは
打つたびにわたしの筋肉が緩んだ。
硬い筋肉が奥まで緩んで、どんどん楽になっていく。
桑原さんは赤外線のレーザーの説明をしながら
痛くないですか?
と聞いてくる。
大丈夫です…
わたしは桑原さんの左手の指輪を見ていた。
結婚しているんだ。
それはそこまでショックじゃなかった。
ただ、そうなんだ。と思っただけ。