第4章 翌朝
昨夜、妻が父に抱かれてしまった。俺のところまでその声は聞こえていた。俺はあんな声など、今まで聞いたことはない。
縁側に腰掛けてぼんやりと外を見ていると、おはようございます、という妻の声が聞こえた。
俺は悔しさを顔に出さない様に、努めて父らしくおはよう、と返した。
その時、妻がふわりと俺を抱き締めた。
ねえ、あなたは杏寿郎さんなんでしょう、と妻が言う。
俺は思わず振り返り、妻を見上げて問い掛けた。
いつ気付いた、まさか閨で気付いたのか、と。
すると、
——あなたとお義父さまが、一緒に鬼狩りから帰ってきた時からよ。
と言って、俺の着物の中に柔手を滑り込ませる。
意図を含んで微笑む我が妻は、鬼よりも恐ろしい女なのかもしれない。