第13章 拾参
何度精を放ったかは覚えていない。彼女の口淫は非常に淫らで心地良く、俺は彼女の口内に何度も何度も射精した。そして彼女は同じだけ、何度も何度も飲精した。
父と同じように頭を押さえ、腰を揺らし、許可も取らずにそこに出した。それでも俺の射精に合わせて、根元から搾るように優しく吸い出してくれるのが堪らなく、その温かい口の中で射精したいと何度も何度も彼女に強請ってしまったのだった。
我に返った時、辺りはうっすらと明るくなっていた。
自身を手拭いで拭きながら、俺はふと思った。
父はあんなに昂り続けながらも、決して彼女に挿入しなかったのだ、と。もしやそれは不器用な父なりの母への貞潔なのではないか、と。
もしや。
俺に体を開くよう彼女を納得させたあの発言も、不器用な父なりの求愛、むしろ求婚だったのではないか、と。
俺は思った。
今回の俺の行為で仮に彼女が身籠って、父と彼女がそうなったとしても、真実を知らない限り誰も二人を反対しないだろう。俺の浅はかさの結果である以上、俺が反対出来る立場でも無い。それを見越した上でのあの発言ではなかったのか。
あの時、父が見せ付けていたのは、いつでもそこにぶち込むことの出来る権ではなく、「こんなに求められても、筋を通すまで俺は耐えてやるぞ」という不器用な父なりの矜持だったのではなかろうか。
__俺は父の策にまんまと乗ってしまったという訳か。
父の胸の中で安心したように眠る彼女が目に入った。父が、もうお前の役目は終わったぞ、と言いたげな目で俺を見る。
彼女のそこに目を落とす。先程までとろとろに濡れて淫らに俺を誘っていたそこは、今は静かに閉じて清廉さを取り戻していた。
俺は二人に背を向けながら、自身の着物を手に取った。それを雑に肩から羽織ると、部屋を出るためふと障子戸に目を遣った。
彼女の飛沫はとっくに乾いてしまっている。そこにあるのはあまりに惨めで見窄らしい、俺の精の痕だけだった。
その障子戸が、朝の光に照らされる。
薄く分厚い一枚に、俺の放った痕だけが醜く影を落としていた。
了