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【鬼滅の刃】ある鬼狩りの家で働いた話

第1章 〜 最終章


私がその屋敷で女中として働き始めたのは、先月のことだった。

その一家は酒ばかり飲んでいる父親と、鬼狩りをしている長男と、少し歳の離れた次男という構成だった。男所帯で何かと手が回らない所があるから、と女中を募集していたらしい。

しかしその一家は男所帯といえども、比較的落ち着いた暮らしをしていた。まだ年若い次男坊が何でもよく気が付いて細々と動き、長男坊も私が掃除などをしていると、かたじけない、などと言って手伝ってくれる。そう、この心優しい長男坊こそが、突然夫を亡くして路頭に迷っていた私に、是非ここで働くようにと強く望んでくれたのだった。

この一家の問題は、主である父親だ。
この父親がおそろしく何もしない。どうやら昔は鬼狩りをしていた様だが、今は昼間から酒ばかり飲んでごろごろしている。それにも関わらず、女中を雇えるほどの暮らしをしているのだ。
その自堕落な父親の姿を見ていると、どうしても好感を持つことなどできなかった。


******


その日は、夕方から長男坊が鬼狩りに行く日だった。そんな日は決まってあの父親の機嫌が悪くなる。次男坊に怒鳴ったり、酷い時には手を上げることもある。何度か止めようとしたが、父親に強い力で振り解かれてしまうのが常だった。
しまいに次男坊には、
「ありがとうございます。だけどあなたの身も危ない。今後こんなことがあっても、僕は大丈夫なのでもう気にしないで下さい」
と言われ、あの父親からどうしてこんな良い子が育ったものか、と思ったのだった。

夜中に帰って来ると思われる長男坊を迎えるため、風呂を沸かし、米を炊いて握飯を作る。米の炊き上がる匂いで解ったのか、次男坊が台所に来て握飯の準備を手伝ってくれる。
「兄上は、薩摩芋の味噌汁が好きなのです」
と言うので、薩摩芋の味噌汁も一緒に作ることにした。
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