第17章 いや別に来るのは構わないけどさ……
「お邪魔しますよ、記子さん」
「ようこそアズール先輩」
「ああそれとこれ、つまらないものですが」
「わざわざありがとうございます、どうぞ中に」
あの日から、アズールは頻繁にオンボロ寮に遊びに来るようになった。
いや、正確には毎日だな。
特に拒む理由もないので中に入れてやる。
「記子さん……」
「はいはい、いいですよ」
何を気に入ったのか、遊びに来ると必ずと言っていいほどハグを要求されるようになった。
まあ彼の場合、普段から想像を絶するほどの努力を重ねて来たのだから、たまには羽を伸ばす時間も必要だろう。
ただ、本当にこれで羽を伸ばせているのか?
「……頭、撫でてください」
「よしよし、よく頑張りましたね。今日も一日よく頑張りました」
「ん……もっと撫でてください」
人って本当に疲れると、後先考えずに甘えるものなんだろうな。
まあアズール限定かもしれないけど、絶対シラフの状態のアズールならこんなことしないもんな。
「記子さん……」
「どうかなさいましたか?」
「ジェイドから、記子さんの作るホットサンドが絶品だと毎日のように自慢されるんです。
しかも食べさせて貰ったと言ってずっと自慢してきて……いい加減腹が立つのと、非常に羨ましいので僕も食べたいです」
あのウツボは一体何を考えているんだ?
というか、ホットサンドってあの時口に突っ込んだやつだよな?
あれ以来あげてないのにそんなに気に入ったの?
「ジェイド先輩とは、一度ゆっくりお話をしないといけないようですね……分かりました、簡単なので今から作りましょうか」
「いいんですか? では僕も手伝います」
そんなにホットサンド食べたかったのか、めちゃくちゃ笑顔なんだけど。
せっかくだし、ちょっと手間をかけて網焼きホットサンドにしようかな。