第16章 商売をするなら……
「アズール先輩、一つ提案があるんですけど」
「何でしょう? あ、これ最近手に入った茶葉なんですけど、お味はいかがですか?」
「美味しいです、フルーツ系のスイーツに合いそうですね。
店全体を見ていると、いつも来る常連さんが多くなってきているように見受けられるので、ポイントカードの導入を検討するのはどうかと思ったんです」
「ポイントカード、ですか。それは確かに考えたことがなかったですね」
「ただポイントカードを導入するだけではありません。
安定的な売上を出すために、ちょっとした細工をするんです。
例えば……ポイントカード3枚集めると、アズール先輩に悩みをなんでも相談できる、とか。
メニューの中で一番金額が高いものを注文したお客様には、ポイントが2倍つくようにすれば、お店の売り上げも確保しつつ常連を増やすことができるのではないかと思います」
本来なら、アズールがオバブロした後に導入するんだけど……私が原作を変えちゃったから仕方ないよね。
お詫びもかねて提案してあげれば、物凄い勢いで食いついてきた。
これ、本当はあんたのアイデアなんだけど、まあいいか。
翌日から、早速ポイントカード制度を導入したらしく、早速ポイントを集めようと客が殺到した。
それでも現場は混乱することもなく、皆が一丸となって協力し合い、更に売上を伸ばしていった。
これならもう、私の出る幕はないね。
「記子さん、貴女のおかげで売り上げが毎日物凄いことになっているんですよ。本当に感謝しています」
「お役に立てているようで良かったです。
でも……基盤を作ったのは、他でもないアズール先輩じゃないですか」
「……え?」
「努力は魔法では作れません、アズール先輩だからこそ成し遂げられたんだと私は思います。
だからこれからも、どうか協力させてくださいね?」
そういうと、アズールはしばらく固まった後に、突然私に抱きついてきた。
色々と溜まっていたことがあるんだろうと、そのまま受け止めてやり、頭を撫でてやる。
静かに泣き始めたアズールの気が済むまで、私はただアズールを抱き締めてやるのだった。
大丈夫だよ、もうあんたは一人じゃないんだから。
こんなにも協力してくれる人が、あんたにはいるんだよ。