第2章 見覚えのある場所だなと思ったら……
私は今、目の前で涙目になっている獣、グリムの首根っこを掴んでいる。
何でこんなことになったのかは、まあ察して。
要約すると、突然ツイステの世界にトリップしてあの棺の中から出てきたってこと。
まあグリムがこじ開けたっていうのが正しいかな。
「お前は一体今までどんな教育を受けて来たんだろうな、グリム」
「ふなっ! オレ様の名前知ってんのか!」
「君が今後とんでもないトラブルばかりを持ってくるのも、今私の寮服を奪おうとしてたのも全部知ってるよ」
問題を起こすなら、起こさないように教育すればいい。
さて、こいつにはどんな教育をしようかな。
そんな風に考えてたら、原作通りディア・クロウリーが私を探しに来た。
説明するのも時間の無駄だし、グリムについてはこのまま私が捕まえておくってことで納得してもらった。
本当適当だよなこいつも。
まあそんなんで鏡の間まで連れて行かれて、闇の鏡さんとご対面。顔色悪いないつ見ても。
『汝の名は?』
「そっちから名乗れよ何が悲しくて見ず知らずのやつに個人情報教えんだ叩き割るぞ」
『……すまぬ』
おっと、心の声が出ちゃった。失敬失敬。
てか、謝るんかい。原作通りじゃないじゃんもう、私がここにいる時点でそうか。
「いやいいよ、名前は記子。急に悪かったね。あんたも仕事で聞いただけなんだろうし、これからも無理せず頑張ってね」
『……ありがとう。汝の魂は……どれも当てはまるな。好きな所を選ぶといい、汝ならどこでもやっていけるだろう』
「それより元の世界に戻りたいんだけど。今日仕事だし遅刻とかしたらめんどくさいからさ」
『……すまぬ、汝の世界の扉は消えてしまった。元の世界に戻る方法は分からぬ』
は?元の世界の場所が分からんとかじゃなくて、消えた?
ってことは……もうあんなクソ上司の顔を見なくていいし、理不尽な仕事もしなくていいってこと?
絶対そっちの方がいいじゃん!
「あ、そうなんだ。それならいいよあっちの世界ではろくな目にあってなかったし。一応調べてくれてありがとうね」
「一体何がどうなっているんですか! 記子さんと言いましたね、後で寮を決めますのでちょっとついてきてください」
「ああいいよ、私今使われていない寮にこいつと住むから」
「ふなっ!?」