第10章 王になれない?
「お前に俺の何が分かる! どれだけ努力をしたって、実力をつけたって、王になれねえ俺の何が分かる!」
「ならあんたは、私の何が分かる?
理不尽な思いをさせられ、押し付けられ、それでも我慢こそが美徳であると言われ続けてきた。
必死に耐えてこなしても、残ったのは疲労と壊れた心で、賞賛なんてされやしない。
上司の言うとおりにしろと言われ、従い続けてきた結果がこれだ。
王になれない? そんなに王になりたいっていうならば、建国しろ頭を使え。
怯んで怖がってんじゃ、王の器は持てねえんだよ。
あんたを信じ、ついてくるやつは少なからずいるはずだ。いつも通りに堂々としていればいいんだよ。
誰もあんたの国に入りたくないってんなら、私が第一国民にでもなってやるよ。
建国して、超えてみろ!」
勢いで滅茶苦茶に怒鳴りつけちゃったけど、これ終わった?
そう思ってたら、急にレオナさんが大声で笑いだした。
「この俺に、ここまで嚙みついてくるとはな。
ただの草食動物だろうと思っていたが、随分と図太い骨のあるやつじゃねえか。
そこまで言うなら、なってやるよ……お前の王にな」
なんだ、いい顔できるじゃん。
そっちのほうが、王様っぽくていいと思うよ。
そう思ってたら、レオナさんが私に手を差し出し、身を起こすのを手伝ってくれた。
「悪かったな、柄にもなく女に手を出しちまって」
「慣れているので平気ですよ、今更気にしないでください」
ばつが悪そうに、ガシガシと頭をかくレオナさんが可愛く見える。
くすくすと笑っていると、バシッと顔面に尻尾を当てられた。
「うぷっ……何するんですか」
「気に入らねえ面してるからだ」
「流石は暴君王ですこと」
「はっ、光栄じゃねえか」
「それより、紅茶を淹れ直すのでホットサンド食べてみてください」
それ以降、サバナクローの人達の間で私がレオナさんの婚約者だとか、裏でサバナクロー寮を支配している裏寮長だとかいう、意味の分からない噂が立つようになり、全力で事実無根であるといって回る日が続いた。
「あ、母ちゃん!」
「おい誰が母ちゃんだこんなくそガキ産んだ覚えも育てた覚えもねえ」
最終的にサバナクロー寮の母として、一部生徒から母ちゃんと呼ばれるようになったので、潔く諦めた。
「解せぬ」