第10章 王になれない?
「よお、お望み通り直接会いに来てやったぜ?」
本当に来たんだ、そういうところだけは律儀なんだな。
もしかして、前にすり替えて渡したホットサンドの紙、読んだのかな?
『いつでも寮へお越しください、美味しいホットサンドを用意してお待ちしております……第二王子様』って書いておいたんだけど。
まあ来たからには丁重におもてなししないといけないよね。
「これはどうも、どうぞお入りください」
紅茶と速攻で作ったホットサンドを目の前に差し出す。
多分手は付けないだろうけど、有言実行はしておかないと示しがつかないからね。
さて、ある程度は想像ついているけど、一体どんな話があるのやら。
「最近うちの寮生がお前と仲良くさせてもらってるらしいな」
「別に頼んだわけではないですけどね、それが何か問題でも?」
「いや、寮長として礼を言っておこうと思ってな。どうやって手懐けたのかも気になるしな」
「態々ありがとうございます。手懐けたなんて随分と人聞きの悪いことを仰るんですね。
私はただ、躾のなっていない獣達に、常識を叩き込んだまでの事。
どこかの飼い主さんが、躾をするのをお忘れになっていらっしゃったようですので」
そう言って煽れば、グルルルと不機嫌そうに喉を鳴らして威嚇してくる。
頭はいいのに、やる気がないから本来の力を発揮できていない……これほどもったいないことはないわ。
「学園の私有地を縄張りであると主張する、人のものを平気で盗む手癖の悪さ……自然界では当然の行いなのかもしれませんが、ここは学園です。
全てのものは対等に扱われるべきであり、そう導くのは長の務めなのではないかと思いますがね」
私の言葉に、彼の中の何かがきれたのか、突然私を押し倒し、胸ぐらを掴んで叫び出した。