第3章 妻、初仕事をする。
どこに視点を合わせれば良いか分からず、ぼやけたまま遠くを見つめていると、不意に口の端を舐められた。垂れていた唾液を絡め取ったらしい。口の中でやられるよりはマシだったが、やはり慣れない。
「2回しか接吻をしていないのに、既に出来上がっているね。薫」
名前を呼ばれる度に身体が変だった。脳に響いて離れない。
『…はやく』
「分かっているよ」
寝間着の上から乳房を指先でなぞられた。自分で触る分には何も感じないのに、目の前の人に触られるとこんなにもぞわぞわしてしまう。嬌声を抑える為に手の甲を喰んだ。
「抑えてはいけないよ、薫」
『でも、声っ…が…』
手を強引に外されて、口付けられた。同時の刺激に耐えられなくて、頭で何も考えられなくなった。刺激を受けることだけに必死で他の事を考える余力がないのだ。
『ふっ…う、ん…』
寝間着の上から胸を触られていた筈なのに、いつの間にか上半身を脱がされて直に触られている。乳輪を乳首に触れないようにくりくりと弄られて、不意に身体がビクついた。腰が引けて、逃げようと踠くけれど、逃がしてもらえそうにない。
「薫はいい場所が分かりやすい。ここ、好きだろう?」
乳首をきゅっと引っ張られると、あまりの快感に顎を上げてしまう。
『あっ、ああぁーっ!』
声が出てしまい、咄嗟に口を押さえた。自分でちょっと触れてしまった時にはこんな風にはならないのに、何が違うというのだろうか。何もかも綾人の掌の上だった。
「可愛らしいね、薫。こんなに乱れて」
『ぁ、あ、やだ…』
「嫌かい?ならやめようか」
意地悪だ。辞めないでほしいというのを待っているかのように粘っこい視線。この快感が終わる事が、耐えられなくなるとは思っていなかった。
『や、やめない、で…』
泣きながら訴えた。自分から求めるなんて、なんてはしたないのだろう。どんな顔して明日から会えばいいのか。
「いいよ。続けようか」
乳首をこねくり回される度に、声が溢れてくる。こんな声聞かれたら明日から神里家の人に顔を合わせられないと分かっているのに止まらない。自分の意思と裏腹に、艶っぽい声は出続けるのだ。
『う、うぅ〜!』
恥ずかしくて、涙がポロポロと溢れてくる。綾人がギョッとしたように私を見て慌て出した。
「痛かったかい?」
『ち、違う。何もないから…心配しないで』