第6章 ロキ 「故郷だから」
お互い黙ったままあの集落を出る。
「手、見せて」
沈黙を破って話しかけてくるロキさんに恐る恐る手を見せた。
「ガラス…、中入っちゃってる。アイツにやられた?」
怪我の周りを指でなぞられる。
「違うよ…!なんか、自分でやりすぎちゃったっていうか……。とりかくあの子は悪くないから」
そう言うとロキさんは少し微笑む。
「そっか」
そして優しく頭を撫でられた。
「…それもそうだけどさ。ごめんね、カナタ。君が僕のことでそんなに悩んでたなんて思ってもなかった」
謝られると恥ずかしくなる。離れようとすると強く抱きしめられた。
「あのさ、僕……本当にカナタのことが好きだよ。誰よりも、君が大事だ」
耳元で囁かれる。
私はただ口をパクパクさせるしかなかった。
「君が立派な女性になったら、君にはこんな僕よりもっといい人が現れると思ってずっと我慢してたんだけどもういいや」
ふふっと笑って私を抱きしめる力が強くなる。
そして少し間を開けてから、
「僕と付き合ってくれる?」
との一言。
何も答えない私の顔をロキさんは首を傾げて覗き込んでくる。
「おーい…、ってええ!?」
私の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
そんな私の顔を自分の服の袖で拭うロキさん。
「もー……。可愛いんだから」
そう言いながら私の頬を撫でてくる。
それでも涙をとめない私を見てロキさんは私の目を自分のの腕で覆った。
そして唇に暖かい何かが触れる。
「ん…?」
そして腕が離れていって見えてきたのは整った顔。
……!!今ロキさんとキスしてる!!?
「ロキさっ…!」
涙も引っ込んで離れようとするのに頭を固定されて動けない。
パニックになっている私を見てロキさんは笑った。
「カナタはほんとに可愛い!」
そして固まっている私に何回もキスをしてくる。
あまりの刺激にクラクラしてきて倒れそうになって初めて、離れてくれた。
「おっと…、病院行かなくちゃね。行こっか。僕のお姫様」
そう言って私をお姫様抱っこして歩き出した。
治療も終えてギルドに帰った頃にはロキさんは前以上に私に甘い言葉を投げかけるようになった。
まあ、女付き合いは少し減っただけだけど。
-𝑒𝑛𝑑-----------