第6章 ロキ 「故郷だから」
「カナタはいつも可愛いね。ほんと食べちゃいたいくらいだよ」
カウンターに座っていた私の顔を覗き込んでニコッと微笑むロキさん。
…またからかってる。
私が素直に喜べない理由はロキさんにある。
紳士的で女性に最高に優しいロキさんに声をかけられた女性はあの甘い言葉と顔に簡単に虜になる。
今だってそう。
距離が近い私たちを見て周りの女性たちがコソコソと何かを話している。
そしてロキさんは女性たちの近くに行って言う。
「こらこら、…僕、君たちの可愛い口からそんな言葉聞きたくないな…?」
いや、悪口言われてたんかい。
さっきの態度は一変女性たちはキャーキャー言う。彼女たちを引き連れてロキさんは私の元から去っていった。
可愛いとか冗談で言われたらへこむっての。
私は横にあったアイスティーを飲み干した。
「ああ〜!リリスちゃん。それ私のだよ…」
落ち込んで肩を落としたレビちゃん。
あ、何やってんの私。
自分の手に持っているグラスを置いてカウンター内にいるミラちゃんにお詫びのアイスティーとメロンのかき氷を注文した。
「ごめん。レビちゃん…」
「いいよ〜。むしろ得しちゃったし!……それより何かあったの?」
レビちゃんはニコッと笑ってから聞いてくる。
「それ、私も気になるわ」
ミラちゃんもアイスティーをレビィに差し出してから頬杖をついて私を見てくる。
2人のキラキラした目で見つめられながら私は口を開く。
「ロキさんの煽りに私上手くかわせなくってさ。自分に嫌気さしちゃったの」
そう言ってため息をつくと2人は顔を見合わす。
そしてミラちゃんが口を開いた。
「私は貴方に対するロキの言葉全部本物だと思うんだけどな〜?」
うふふ、と笑いながら言われるけどそれならロキさんが私の事ほんとに可愛いって思ってることになるよ。
「ありえないですよ…。冗談きついです!」
私は少し赤くなった顔を隠すために下を向いた。
その時レビちゃんが追い打ちをかけてくる。
「実は私もそう思ってたんだよね。なんか私たちとあの女の人達とカナタちゃんとは違う気がして…、まあ、ロキのことはよく分かんないよね」
レビィちゃんまで……。
ますます顔を赤くした私を2人はからかってくる。