第2章 グレイ 「多分貴方のこと」
そして...皆酔いも回ってきたとき、私は隅の方にいるグレイを見つけた。
「グレイ!」
しっ、と慌てて口を抑えられて引き寄せられる。
あまりの近さにドキドキしながら頷くとグレイは溜息をついた。
「今さっきまでジュビアに捕まってたんだよ。...ん?カナタじゃねえか」
悪い悪いと笑いながら距離を離される。
「あのね、グレイ」
「ん?」
彼はレモンスカッシュを飲んでいる。私は少し悩んでから口を開いた。
「私グレイのこと好き」
飲んでいた飲み物を盛大に吹き出している。
そんなにおかしな事を言った覚えは無いけれど。
「ゴホッ、お前まで何言ってんだよ...」
むせながらまた距離をおかれる。
「ごめんね。でも、声かけられた時から多分グレイのこと好きだった」
私がグレイの顔を見ながら言うと少し笑う。
「多分かよ」
「うん。でも今は絶対グレイのことが好き」
笑っていた顔が固まった。
そして顔を背けられる。
「......私たち妖精の尻尾に助けられたの。だから今こうやって皆と話が出来る。ありがとう」
「おう...」
グレイの耳が赤くなっている。彼は口元を腕で覆いながら頷いている。
「それでさ、グレイにはもっと感謝してる。あの時ああやって話しかけてくれなきゃ心壊れちゃってた。実はね...気持ち悪いかもしれないけど大魔闘演武のときずっとグレイのこと考えてた」
グレイに距離を詰めるとまた距離をあけられる。
「私の事好きじゃなくても良いの。また会ってくれる?」
少し考えて、口を開いた。
「...ああ。生憎こういうのは慣れてるんで。嫌うことはねえかな」
そう言われて私は嬉しくなって微笑んだ。
「じゃあ...。一つだけお願いあるんだけど聞いてくれる?」
「...なんだよ?」
身構える彼にそう言われて私は微笑んで言う。
「...頭撫でて?」
「.........フッ」
吹き出された。
「そんなこと言う奴だったのかお前」
そう言って頭を優しく撫でられる。
「今までは甘えちゃダメだと思ってたから。でも、今は剣咬の虎も変わってるでしょ?だから私も変わる」
そう言っていると後ろからローグの声が聞こえた。
「...カナタ」