第24章 ジェラール 「プレゼント」
今日はクリスマス。正式に言うとイブだ。
昔の私はそんな行事を楽しむ余裕はなかった。
ジェラール達と別れた後の私は散々だった。
あの気持ち悪い男に買われて、私はいつでもあの人と一緒に居るよう命じられた。
時にはあの人と眠らなくちゃいけなかったし、他の女性と遊んでいるところも見せられた。
でも、私はその時はまだ小さかったから、手を出されることはなかった。
その点では他の子達と比べてまだ良かったんだろうなと今になっては思う。
……そうだ。他の子も居たんだった。
私は自分で思い返して初めて思い出す。クリスマスといえば……毎年思い出す、あの時にお世話になっていた先輩居たな。
あの男は私の他にもいろんな女の子を買っていた。皆顔が整った綺麗な人達だった。
まだ私が皆に馴染めてなかった頃、1人の女の人が私が1人で化粧室に入った時に声をかけてきた。
「初めまして。私はシーナ!貴方の名前は?」
鏡前に1人で座る私の横に椅子を持ってきて笑顔で聞いてくる。
「……カナタです」
無愛想に答える私に彼女は微笑む
「カナタ!いい名前ね!」
……何か懐かしい気持ちになった。私はつい微笑んで返事をする。
「シーナさんも。いい名前ですね」
シーナさんは少し驚いたような顔をしてからすぐに笑顔を見せる。
「でしょ?…ふふ。貴方って可愛い顔して笑うのね。……それと。そのリップよりこっちのリップの方が合うわよ」
そう言って赤いリップを塗ろうとする私の手を止めてシーナさんは淡い色のリップを見せてくれる。
「……最近来たんでしょ?しかも、あのクソ親父に気に入られてるって聞いたわよ。…あのおっさん卑怯よね。お金で人を買うなんて」
私の唇にリップを塗りながら怒るように話す。私は少し眉尻を下げたがすぐに微笑んだ。
「…………良いんです。好きな人達を守れたから。それで良いんです」
私の顔を見てシーナさんは優しく微笑んだ。そして私の頬を撫でる。
「……そっか。守れたんだね…。偉いね」
そう言われて私は涙が溢れそうになる。するとシーナさんは慌てて私の涙を拭う。