第2章 グレイ 「多分貴方のこと」
「俺の勝ち、だな...」
私の横にきてニッと笑う彼に見下ろされる。
「...名前、教えて...?」
うつ伏せからなんとか仰向けになって呟く。
「知らなかったのかよ。...グレイだ」
グレイ...。大魔闘演武が終わったら会うことはないかもだけど絶対覚えとくね。
勝手にそう誓ってふふ、と笑う。
「私の名前、覚えててくれる?」
そう聞いて名前を言おうとするとグレイが口を挟んだ。
「カナタだろ?アマリリス・カナタ。多分当分忘れねえよ」
私の名前知ってくれてたのか。しかも当分忘れないって...。
「...そんなに嫌な女だった?」
眠たくなってきて笑いながら聞くとグレイは私の横にしゃがんで言った。
「違ぇよ。こんなに強い女は珍しいからな。」
そう言ってニカッと微笑んでくれた。
強い女...。私にとったら凄い褒め言葉。
無意識に手をグレイに出していた。
グレイは私の手をグッと握ってくれた。
また、アナウンスの声が聞こえる。
「大逆転!!カナタがグレイに完全敗北...!!」
これ、皆聞いてるのかな。戻ったらまた怒られるな。
そう思うけど清々しい気分で満ちている。
私はそのままグレイの首に手を回して耳に口を近づけた。
「...貴方達なら剣咬の虎にきっと勝てる」
グレイは驚いたような顔をしてこちらを見た。
私は遠くの方を指さして早く行けと促す。
きっと貴方がスティング達を変えてくれる。