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短編 フェアリーテイル

第23章 ゼレフ「約束」


ゼレフとはミルディアン魔術学院で出会った。

仲良くなったのは、人に教える立場の人間である大人たちが天才と言う彼に興味を持って私から話しかけたのがきっかけ。
初めは警戒されてたけど今は良く笑ってくれる。



「ゼーレフ!何呼んでるの?」


するべき勉強は終えたのにも関わらず書物を読み漁る彼の肩を後ろから叩いた。


「うわっ…と、カナタか」


ハッとして眉間の皺を抑える彼。そして息を吐いて下を向いてしまう。


「私じゃダメだった?」


からかうように笑いながら聞くと彼もフッと笑う。
そして私を見つめながら言った。


「…そんな訳ないでしょ?」


そう言ってまた本のページをめくり始めるゼレフの手を止める。すると彼は目を見開いてからまた微笑んだ。


「……離してくれなきゃ。僕カナタに聞きたい所があるから質問したいだけなんだけどな」


そう言われてゼレフの手を離した。彼は少し頷いてからしおりを挟んでいたページを開けた。


「この話なんだけど…、人間は絶対に未来は見る事はできないし過去に戻ることも出来ない。君は…どう思う?」


こんなのを疑問に思うなんて。
ゼレフは私の顔を見ながら聞いてくる。

私は真剣に考えた。
こうやって彼が人に意見を求めるのは教授か私くらいだと聞いた。

だから期待に応えたい。


「無理…、だとは思わない。だってたまに聞かない?未来から来た人、とか」


私がそう言うとゼレフは頷きながらまた聞いた。


「なんで無理じゃないと思う?」


良く分からないながらも必死に考えて答えをひねりだす。


「これは私の考えなんだけど、人の手で作られた魔法ってあるじゃん?あれと同じじゃないのかな。それこそ、最近流行りの星霊魔法とか。あれって鍵が売られてたりしてるよね」


私は人差し指を立てる。


「それにどうやって星霊が入ってくるの?……仔犬座の鍵っていっぱいあるけど鍵が精錬される度に仔犬が増えるのかな。それとも仔犬が増える度…とか?」


ゼレフは私の人差し指を握って言う。


「奇遇だな。それ、僕研究してるんだ。今度一緒に論文書いて提出してみない?僕の考えは仔犬が増える度…かな」


「え、したい!!」


そう言うとゼレフは笑って頷いた。
そして小さく


「じゃあ仔犬座買ってみるか」


と呟いていた。


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