第15章 ガジル 「決心」
ガジルは最近夜遅く帰ってくる。私はと言うといつも先に寝ておけと言われるけど毎日起きて待っている。
眠たくなって机に突っ伏していると鍵が開く音がする。玄関まで向かいたいけど体が言うことを聞かず動かない。
「…ん。また起きてたのか。……眠たいなら寝とけって言ってんだろうが」
そう言って軽くデコピンされる。
でもガジルのその声は優しい。
「ん〜…おかえり…」
おでこを抑えながら言うとガジルは私を担ぎ上げて寝室に運び込む。
「おう、もう寝とけ。最近ずっとこんな時間まで起きてて疲れてんだろ」
ベッドに投げられて私はガジルの手をひく。
「ガジルだって一緒じゃん…。フェアリーテイルってそんな無理させるギルドなの?」
目を擦って聞くとガジルの声が少し低くなる。
「……違ぇよ。俺が、ケジメつけてぇだけだ」
このガジルは何言っても聞かないってわかってるから私は何も言わない事にする。
「…そっか。ご飯は温めてね。…おやすみ」
「ああ、おやすみ」
私は目を閉じた。
起きて隣のベッドを見てもガジルはいない。朝早くに行って夜遅くに帰ってくる。
二人の時間なんて当分ないんだろうな。
少し悲しくなりながら家事に取りかかった。
今日もまた、帰りが遅いとメモが机に貼られていた。ああ言われたけど待つくらい私も勝手にするもんね。
今日は元気よく迎えられるようにコップいっぱいのブラックコーヒーを飲む。
するとドアがノックされる音がする。
もう帰ってきたのかな。
今日は早く帰らせて貰ったのかな?
まだ夕方だし。
嬉しくて勢いよく扉を開けた。
目の前にいたのは知らない男の人たち。
「え…、誰ですか…?」
そう聞くも彼らは私の口を塞ぐ。
誰かの魔法で動けないように縛られてしまった。
私たちの家に入って中を漁る。
…やめて!何でそんな事するの?
私は口を塞いでいる手を思いっきり噛んだ。
「勝手に入るな!触るな!何がしたいの!?」
そう叫んだ瞬間頭に衝撃がはしる。
何かで殴られたんだって咄嗟にわかった。
目の前が真っ暗になる前に見える。
ガジルとの写真が床に落ちる。
棚の上のお兄ちゃんからもらったネックレスが彼らに踏まれて割れた。
やだ。お兄ちゃんと繋がっていられるのはあれだけなのに。
私は意識を手放した。