第1章 ナツ 「あの宝石」
首を傾げると後ろからナツの声がする。
「カナタ!...これ、ハシラに教えて貰って作った...!」
私たちの元に来たナツは手に何かを握っている。ハシラさんはニコッと笑って集落の方へ行ってしまった。
「お前が何で怒ったのか分かんねえけど...、ここの宝石で...ペンダント?作ったんだ...受け取ってくれるか?」
ピンクと白のマーブルでキラキラと輝く宝石に麻の紐が通してある。
普通は麻を通すだけでも、不器用なナツが作っているのを想像して見ると上手くいったのだとわかる。
「...もちろん、受け取るよ。...でも!キスしたのは許さないから!」
そう言うとナツは当然のような顔で言った。
「...なんで?俺たち好き同士だろ?好き同士ならキスしても何も問題ないんだぞ」
そんな事も知らないのか、とナツは首を左右に振った。
...ん?
「......はぁあ!??」
みるみるうちに顔が赤くなっていくのが分かった。
「な、な、なんでそんなことに!!」
「だってエルザが『好きでもない人間と手は繋がない』って言ってたから」
エルザ...!何言ってんの!
でも、でもそれだと...、
「ナツは私の事好き...ってこと?」
真っ直ぐ目を見てニカッと笑う。
「ああ、大好きだ!」
そのとき、ペンダントがキラッと光った。
祭を楽しんで私達が帰ったあと、村はまた四季折々の景色が見れるようになった。村の鬼、いや、神の話はこの村の戒めとして神社に絵巻物で残しておくらしい。
そして村から神の話が消えた代わりに新しい話題が広がった。
「この村の宝石で作ったペンダント渡したら好きな人と付き合えるんだって!」
今では神社の敷地内でペンダントを作る体験が行われている。
-𝑒𝑛𝑑---