第4章 in ボード(白鳥じゃないよ)
ゆっくりノンビリ園内を散策した後
俺達は園内にある小さな池にやって来た
ソコでは手漕ぎのボートが貸し出されており
俺は智くんを誘って、ボートに乗り込んだ
翔「…いやぁ、乗ったは良いけど、小さい池だから、一周なんかあっと言う間だねぇ(汗)」
想定外に小さな池に戸惑いを隠せない俺
でも、智くんはそんな事は全く気にせずにノンビリと言った
智「別に一周しなくても良いじゃん……ただ、湖面を漂ってるのも良いかもよ?」
翔「え…?」
智くんはチラッと俺に目をやってから、しなやかな指先で湖面を撫でた
智くんの長い優美な指先から、静かな水面に波紋が広がっていく
智「……ただ、流されるのも……悪くないよ」
翔「……」
水面を行ったり来たりする智くんの指先
伏せ目勝ちになって湖面を見詰める美しい横顔に、午後の日差しに切り取れた木漏れ日が、淡い陰影を創っている
綺麗だなぁ…って、思った
何か、憂いを漂わせたその表情も
ゆっくりと、艶めかしく湖面を撫でる仕草も
…全部…
そんな事をぼんやり思っていたら
ついうっかり、彼の琴線に触れるようなコトを口走ってしまった
翔「……何で、松岡って人は君を手放したんだろう」