第14章 𑁍眠り姫と真紅の狼さん / 真田幸村
「寝ながら気をやるのは無理か、残念」
「ゆ、幸村……な、んで……」
「そりゃー、お前がヨダレ垂らして眠りこけてたから、ちょっと悪戯しようかと思って」
「はぁーー?!い、悪戯って……!!」
俺が言えば、結衣は顔を真っ赤にしながら、手の甲で口元を拭った。
冗談なのに、ヨダレ垂らしたとか本気にしたのかよ。
……ほんと、可愛くて参る。
俺は必死に口を拭う結衣の手を掴み、代わりに音を立てて唇を啄む。
結衣はまるで鳩が豆鉄砲を食らったかのように目を丸くさせたが、その様子がおかしくて、つい吹き出してしまった。
「な、なに笑って……!」
「いや、かわいーなと思って」
「か、かわっ……」
「ん、可愛い」
「〜〜〜……っ、悪戯で、こんなことしてっ…さ、最低!ばかっ!」
結衣は勢いよく上半身を起こすと、急いで着物の裾を直して俺に背を向けてしまう。
あーあ、背中がすげー怒ってるな。
でも、もう気づいたから。
『好きだ』とすんなり口から零れた。
意識してると気づいたけれど、それはもうこいつに恋していたんだなって。
ストンとハマる所に想いがハマって、逆にすっきりした。
─────だから、こっち向けよ
「……っ!」
ふわり、と背中から掻き抱くと結衣は大袈裟なまでに体を跳ねさせた。
ほんのり甘い匂いがする。
結衣特有の匂いなのか、それとも気をやった後で色香がただ漏れのせいなのか。
そんなお前もいいな。
これからたくさんそんな姿を見ていきたい。
そんな願いも込めて────…………
耳元で囁くようにして、想いを告げる。
「ばかって言う方がばか。でも…俺も大概ばかだよな」
「そ、そうだよっ……」
「お前が可愛く寝てるの見てたら、つい手が出た。お前が寝言で俺の名前呼んだりするからだぞ」
「えっ……」
「でも、おかげで気づいた、自分の気持ち」
「お前のこと、すげー好きだ……結衣」