第13章 無敵の甘いモノ、頂戴? / 徳川家康
「食べ放題……って何?」
いつも通りの日常だった、ある日の夜。
寝る準備の合間に、何故か結衣が俺に手を合わせて『お願い』をしてきた。
それは、新しい甘味屋が出来るから、政宗さんと一緒に行かせてほしいと言うのだ。
初日は食べ放題があるから……と結衣。
『食べ放題』とは一体なんなのか、しかも何故政宗さんと?
すると、結衣は正座しながら俺を見つめ、何やら真剣な表情で言う。
「食べ放題って一定の金額払えば、いくらでも食べていいよって言う仕組みなの。無制限で美味しい甘味が、たくさん食べられるんだよ!」
「へぇ……」
「新作がたくさんあるって言うから、行ってみたくて…本当は家康と行きたいけど、家康は甘いもの苦手でしょう?」
「……」
「秀吉さんもどちらかと言えば甘いの苦手だし、三成君や光秀さんだと興味ないだろうし……政宗なら行ってくれるかなって」
(なるほど、色んな意味で最良の選択したわけか)
結衣は甘いものが大好きだ。
で、たくさん食べたいが俺と行くと、俺が食べられないだろうから……政宗さんを選んだと。
確かに秀吉さんもあまり甘味を食べる姿は見ない。
そして、食に興味が無い光秀さんや三成は無理。
信長様が行ったら大変な事になるし、慶次や蘭丸……は今確か安土を離れていたはずだ。
連れていくのに政宗さんを選んだのは、確かに賢い。
あの人なら食通だし、多分一緒に行ったら一番楽しいのだろう。
─────だが、その選択はちょっと待て
ハッキリ言って嫌な予感しかしない。
政宗さんのことだ、結衣の口に甘味が付けば『付いてるぞ』と気軽に触れて拭ったり、移動中は勝手に手を握ったり……
そんな光景が、ありありと目に浮かんだ。
元々あの人は人との距離が近い、それに気に入ったものには躊躇わず触れる。
結衣はあの人のお気に入りでもある故……結衣と恋仲になった今でも油断も隙もないのが現状だ。
俺は一回小さくため息をつくと、結衣のおでこをぴんっと指で弾いた。
『痛っ』とそこを手で抑える結衣を見ながら、『お願い』について答える。