第12章 𑁍蒼色マリアージュ《蜜愛編》/ 伊達政宗
「じゃあ、行くか」
「うんっ!」
先に馬に乗った政宗が、私を馬上に引き上げる。
すると、下から秀吉さんがまた心配そうに声を上げた。
「今日はゆっくり行けよ、政宗。早駆けしなくていいんだからな!」
「それは知らねぇなあ」
「おい、結衣の事を考えろ!」
「風切って走った方が気持ちいいだろ?」
「ふふっ、そうだね」
政宗が出した合図で、馬が走り出す。
遠ざかっていく、安土城と秀吉さん。
たくさんお世話になった、大切な場所。
(ありがとう、幸せになるね。愛する人と)
たくさんすれ違って、最後に拗れて。
私達は前途多難だったよね、正直。
政宗に斬られそうになったことも、
一緒に湖に落ちたことも、
花火を一緒にしたり、追いかけっこしたことも。
全て全て、愛しい軌跡。
これからもめいっぱい幸せになろう。
私は前だけを向いて、
あの日のように、煌めく世界を目に映していった。
─────それから、二ヶ月後。
秀吉のもとに、結衣から一通の文が届いた。
祝言の日取りが決まったかと思い、文を開いた秀吉は……
中に書いてあった内容に、目を見開き思わず苦笑いを浮かべた。
「子供出来ちゃいましたって……順番逆だろ、普通。政宗、あの野郎一応国主だろうが。その辺、しっかりしなきゃだめだろ、全くあいつは」
でも、そこに書かれていた内容を読んで、仲良くやっているようだとよく解り、秀吉は安堵のため息をつく。
しかし、やはり妹を白無垢を着せる前に孕ませたことは納得いかない。
一回説教しに行かねばならないと、本気で思った。
今日も、安土も奥羽も平和である。
『 秀吉さんへ
皆さん、お元気にしていますか?
祝言のお知らせじゃなくてごめんなさい。
実は……子供が出来ちゃいまして。
逆算したら、どうやら安土にいた頃、
お腹に出来ていたようなんです(笑)
体が落ち着いたら祝言は挙げる予定です。
政宗はすごく喜んでいました。
大丈夫、私達は……
めっちゃくちゃ、幸せですっ!! 』
蒼色マリアージュ《蜜愛編》
了