第12章 𑁍蒼色マリアージュ《蜜愛編》/ 伊達政宗
「はぁっ、はぁっ……」
「結衣……」
「まさ、むね、な、なん……」
「なんで、じゃねえ。それは俺の台詞だろ」
俺は結衣の両手首をまとめ上げ、頭の上で片手一本で固定する。
そして、空いた片手で結衣の顎を掬い上げた。
真っ赤な顔、『あの日』もこんな顔をしていた。
今みたいに口づけられたのか、あいつに。
それとも、もっと進んだ事も?
想像は止まらない、そして……
こんな場所にあいつと来たこと、許さねえ。
「お前に話したことあったよな、ここはいかがわしい茶屋だから間違っても近づくなって。俺を追いかけて、あいつと入ったのかよ、ここに」
「っ……違うよ、若旦那さんが勝手に追いかけてきたんだよ!それに、最初に知らない女の人と入ったのは政宗じゃない!し、しかも……」
結衣の目が次第に真っ赤に潤み……
でも涙は零さないといったように結衣は堪えている。
結衣は一瞬口ごもったが、俺に向かって悔しそうな口調で言った。
「わ、私以外の女の人と愛し合ってた……!」
(やっぱりあれはそう見えたよな)
最悪とも言うべき時に結衣は来た。
あれはどんなに説明しても、"そう"にしか見えないのだろう、それはこちら側が悪い。
だが、そもそもの原因を作ったのはお前だ、結衣。
男と仲睦まじくし、俺と別れたなんて噂まで立てられたのは、お前は無防備に可愛らしくするからだ。
胸くそ悪いしかない。
婚約者がいるのに、なんで男と二人で甘味屋なんか行くんだよ。
「お前だって、隠れてあいつと逢瀬してただろうが。二人で仲良くしやがって」
「愛し合ってたのと逢瀬じゃ、全然意味が違うでしょう?!それに政宗、あの時全然気にしてなかったじゃない!」
「うるせえ、可愛くないこと言うのはこの口か?」
俺は結衣の口の中に親指を入れて、言葉を封じる。
舌を刺激するように押したら、だんだん潤ってきて、いやらしく喉がコクンと鳴った。
お前の可愛い姿は俺だけのものだ。
なのにあの日、赤い顔して俺と目を合わさなかった。
色々勘ぐって、酷く神経が擦り切れた。
ジワジワと黒い熱が俺を支配して……
醜い劣情が俺を喰らい尽くしたから。
格好悪いなんて言ってられない、お前を繋ぎ止められなくなる。