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【イケメン戦国】花紅柳緑𑁍𓏸𓈒

第7章 真相は愛しい我慢の後で / 明智光秀




「……ようやく寝たか、結衣は」


俺が自室に戻ると、褥の上で陥落する結衣の姿があった。
本を読んだり、縫い物をしたり……
きっと『起きている努力』をしていたのだろう。
その形跡が残っていて、思わず苦笑してしまった。

俺は結衣を抱きかかえると、毛布を捲って布団へ寝かせてやる。
自分自身も同じ褥に入り込み、上から毛布をかけ直した。

そして、いつもと同じように結衣を抱き竦める。
柔らかな体温や、結衣特有の甘い匂い。
それらを感じれば、心の柔らかい部分がぢくりと疼いて、すぐさま可愛がりたくなった。
しかし​───………


「まだ消えていないか。あと一日くらいだな」


首筋に薄く残った所有痕を見て、思わず息をつく。
結衣と恋仲になり、一緒に暮らし始めてからというもの……
俺は馬鹿の一つ覚えのように、毎夜結衣を抱いた。

可愛くて愛しくて、焦がれて。
欲情に駆られた俺は、みっともなくも結衣の躰に何度も熱を注ぎ……
それが毎晩となれば、結衣を相当疲れさせたのだろう。
結衣を労れと秀吉に呆れられた程だ。


​────だから、俺は思った
躰の痕が消えるまでは触れるまいと


結衣は痕が消えにくい体質らしい。
すでに数日経っているが、まだほんのり赤い。
だが、また触れられる日も近いだろう。
こうして結衣が陥落するのを待つ日々は、そろそろ終わりそうだ。


「んー…みつ、ひ……」
「……寝言か。名を呼ぶとは愛らしい小娘だ」


少しあどけない、無防備な寝顔。
可愛く笑った顔も、艶っぽく歪む表情も。
どの顔をしていても、結衣が愛しくて堪らない。
触れられないのが辛いけれど……
無理をさせた『戒め』として、もう少し我慢することにしよう。


「​─────愛しているよ」


前髪を掻き分け、唇を押し当てる。
ちゅっと甘い音を立てて離せば、眠っているはずの結衣が微笑んだ気がした。

酷く心が穏やかだ。
乱世に安寧などないと思っていたけれど……
少なくとも、結衣は俺の安らぎだ。
そして……帰る場所だ。

改めてそれを再確認し、目を閉じる。
抱き合った体温がひとつに溶け合う心地を感じながら、優しく温かい夢を見たのだった。





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