第4章 熟した果実の甘い嫉妬 / 織田信長
すると、信長様は答えをくれるように、私に深く口づけた。
舌が絡まり、口内を侵されて軽く目眩まで起きる。
柔らかく上顎や歯列を刺激されて、気持ちいいと思えば息も甘くなり始めて……
信長様はその状態のまま、私を軽々と横抱きにした。
ぼうっとする頭で信長様を見上げれば、瞳の色を濃くした視線と絡み合う。
(あ……信長様、興奮してる)
欲情すると瞳の色が濃くなると気づいたのは、初めて信長様に抱かれた時。
こんな熱っぽい眼差しは、きっと私しか知らない。
それが嬉しくて…身を任せてしまうのだ。
「……いい顔をしている、結衣」
「え……」
「俺を欲しがる目だ、堪らん」
信長様が私を褥に下ろしながら、色っぽく言った。
すると、信長様は私の手から練り香を取ると、小指に纏わせて私の首に筋を描く。
ふわりと官能的な匂いが漂い……
信長様は少し息苦しそうに、吐息を吐き出した。
「やはり、貴様に似合う香しさだ。熟した果実のようで……すぐに食いたくなる」
「っ……食べていいですよ」
「結衣」
「信長様の誕生日ですから、私自身も贈ります」
(……っ、大胆だったかな)
恥ずかしくなって、少し視線を逸らしたら、すぐさま顎を捕らえられて正面を向かされた。
信長様はなんだか余裕が剥がれたような、そんな顔をしていて。
眉をきゅっと顰めると、掠れた声を出した。
「俺を煽ると……知らんぞ」
そうして全てを暴かれる。
甘い匂いに混じって、いやらしい水音や、衣擦れの音や……
天主の空気が酷く色濃くなって支配する。
お誕生日おめでとうございます。
愛していますよ。
ずっとずっと、死ぬまで。
いや……きっと、来世になっても。
啼き声は響き渡り、いつも以上に触れ合った夜は、とても私を満たしてくれた。
喧嘩も愛を深めるスパイスかな?
熟した果実は、貴方からの愛のスパイスで……
今日も貴方の前だけで、美味しく薫る。
了