第3章 いろはに恋を / 伊達政宗
当初の目的なんて、どこへやら。
後を付けられているようだからと護衛をして。
口づけたのは、結衣に好意を寄せる輩を諦めさせるだったのに……
まんまと捕まった、この俺が。
そもそもアイツを"諦めさせる"と、そう仕向けたのは何故だろう。
奪われたくなかったからか。
結衣をどんな奴にでも。
そう、誰にもだ。
すると、結衣が俺の胸の辺りを掴んだ。
そしてぽつりと、でもはっきりと俺にその意思を告げた。
「……続き、する」
可愛いと思っていた。
笑った顔が可愛いと。
そして、ずっと見ていたいと。
そんな風に思い始めたのは、いつからだったのだろう。
「ん……っまさ、むね」
「可愛いな、お前。もっと…欲しがれ」
「……ぁっ、あっ…まさ、むねぇっ……」
『特別な好き』が解らなかった。
愛しいものには、躊躇わずに触れる。
それが当たり前だと思っていたから。
当然、こいつもそうだと思っていたのに。
もう、全然違うのだと思い知る。
それってきっと『特別な好き』に当たるのだろう。
─────それはつまり、愛していると。
お前はどうなんだろうな。
『続きをする』を選んだお前は。
俺と同じ気持ちだといいんだが。
それを願わずにはいられない。
月が空にある内には帰す気はない。
だから、じっくり想いを聞こう。
疲れて眠る結衣を見ながら、また愛しさが生まれる。
ちょっと順番は逆だけれど、そんな始まりもあるということで。
「────綺麗だな」
肌に咲いた、赤い華を指でなぞりながら……
名前の付けられなかった感情も、鮮やかに華開いたとそう確信したのだった。
了