第1章 零太くん、一生のお願い!
「零太くんのお尻を開発させてほしいの!」
私の家、私の部屋。
零太くんと私の二人きりの部屋に、その声はよく響いた。
「……はい?」
零太くんは眉根を寄せた。私がこういう事を言い出すなんて珍しいから、どうリアクションを取ればいいのか分からないのだろう。
「あ、もしかして伝わってない? 要は零太くんの前立せ──」
「具体的に説明しなくていいっスよ!」
零太くんからのツッコミを頂く。妙な事を言っている自覚はあるから、遮られるのも分かる。だけど……。
「……普段、私に恥ずかしい事言わせる癖に」
何となく、納得がいかない。
私がそう言うと、零太くんがぴしゃりと固まった。顔を手で覆い、ため息を吐く。
「何煽ってきてんですか……」
微かに見える耳は真っ赤になっており、自分が割と凄い事を言った事に気づき、私も赤面する。
「と、とにかく!」
私はこの空気を打ち消すために、声を張り上げた。
「私は、一生のお願いをここで使ってもいいくらい、零太くんのお尻を開発したいの」
零太くんをしっかりと見つめて言う。
私が冗談ではなく本気で言っている事が伝わったらしく、零太くんは、
「……名前さん」
と、私の名前を呼んだ。