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零太くん、一生のお願い!

第2章 開発に成功するまでが『開発』


チャイムが鳴り、一限目が終わった。
教科書とノートを机の中に仕舞って、鞄から水筒を取り出し水分補給をしていると、+組から零太くんがやって来た。

零太くんは巛組の教室に足を踏み入れて、ずんずんと教室の中を進んでいく。

「名前さん!」

零太くんは素敵な笑顔を浮かべて、私の机まで来るとしゃがんだ。机の上にちょこんと乗せられた両手が可愛い。

「おはようございます!」

「おはよう」

いつもは一緒に登校しているのだが、今日は私が委員会関係で早めに学校に行かなければならなくなったから、私は一人で登校していた。
『学校を綺麗にするウィーク』だか何だかで、自分の学年の廊下を綺麗にしよう、みたいな──そう、私は保健委員なのだ。
二人きりの登校中に件の券を渡そうと思っていたけど、それは出来なかった。という訳で、今、券を渡そうと思う。

私は机からファイルを取り出し、中に入れている券を手に取った。

「これ、作ってきたよ」

零太くんに券を手渡す。

それを受け取った彼は、
「うおっ!?」
と声を上げ、口元を押さえた。私には分かる。これ、にやついているやつだ。

『苗字名前が何でも言う事を聞く券』。
紙に書かれている文字が見えたのか、私の席の近くで雑談をしていたクラスメイトのうち一人が、
「苗字……?」
と私の名前を口にしていたが、気づかなかったフリをしておこうと思う。
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