第1章 みにくいあひるの子 …池のほとりで♥️
ある池のほとりに、微笑ましいアヒルの一家が住んでいた。
母アヒルは子アヒル達の毛を梳いて可愛がり、家族の団らんは穏やかな時間を過ごしていた。
しかしその一方で、少し離れた場所で見た目が異なるアヒルっぽくない何かが餌を取っていた。
末っ子ながら、彼は大きくてみにくい外見であった。
「うーん。 毎日家族全員分のご飯を、なぜおれが取らなくちゃダメなんだろう………」
みにくいアヒルの子はポツリと独り言を言い、ふう、とため息をつく。
「そりゃあ、俺らの中でお前ってナンカ変だし? てっか、もはや鳥っぽくないよねー」
「ウダウダうっせえな。 一番デカいお前が餌取んのが合理的だろうが」
背後から兄弟の荒々しい声がガーガーと響き渡る。
アヒルの子はその場から逃げ出し、餌場を探すために周囲を歩き回った。
「まあ、合理的といえばそうなんだけどさ。 あるべき感謝の心がないよね………」
静かな池の水面を見つめてじっと前脚を伸ばし、その瞬間、小さな魚たちがピッと跳ね上がり、岸辺に打ち上げられた。
アヒルの子はそれを繰り返した。
数回後、彼は敏捷に前脚を振り上げ、小さな魚を口に咥えて母親の元へと運んだ。
「お母さん。 今朝のご飯だよ」
「チッ、また小魚か。 たまには鮭やマスでも食べたいものだな。 お前はみにくい上に使えない………本当にアタシの子かねえ」
母親は舌打ちをしながらその小さな魚たちをくちばしに挟み、一つずつ分け与えていった。
みにくいアヒルの子を除いて。
彼はその様子をちらと振り返り、とぼとぼ歩いてまた餌取りに向かった。