第3章 みにくいあひるの子…森の家で♥️♥️
日が暮れた後も、木こりの弟はカーン、カーンと森に軽快な音を響かせ熱心に労働にいそしんでいた。
彼は自分に近付いてくる気配に気付いて手を止めた。
「ン、誰だ? お前」
と、そちらに顔を向ける。
二人ともやたら整った顔立ちの、自分と遜色ない体格の青年と小さな少年である。
「久しぶり。 ええと、この辺りから匂いがして。 家は近くだよね。 真弥……さんに会いに来たんだ」
「なんだと?」
木こりの弟は片方の眉をあげて青年を睨んだ。
(こんな奴は知んねえぞ?)
弟は胡散臭げに青年をジロジロ見ていたが、やがて細い息をついてぷいと顔を横に向けた。
「ま、何でもオオカミよりゃマシだな」
彼の言葉に琥牙は無言で肩をすくめる。
この弟には余計なことは言わない方がいいと判断したのだ。
「………真弥はここにゃいねえよ。 ホラ、この細い道真っ直ぐ行った一軒家だ。 ったく、あの辺はあんま治安よくねえっつって止めたのに」
「真っ直ぐだね。 分かった、ありがとう!」
言い終わらないうちに琥牙は弟の手をぎゅっと両手で握り締め、とてもとても嬉しそうに微笑んだ。
弟はしばらく、早足でそこを後にする二人の後ろ姿を見送っていた。
「フーン……真弥もいつの間に。 けど悪かねえ、かな」
呟いて、ポリポリ頭を掻いてみる。