第11章 マッチ売りの少女…1月1日❤❤
今年も年が明けた。
翌朝早く、サラはベッドから起き上がることができたので部屋の奥にある浴室に入った。
体中についた汚れを落とすためだ。
主に一部屋しかないが、トイレや浴室、小さな炊事場は一通り揃っているようだった。
時々下の階から話し声が聞こえたので、おそらくここは宿なのだろうと思った。
湯を体に浴びてほっと息をつくと、昨夜の出来事を思い出してしまった。
(あれは夢じゃないのよね……)
そう思うと体が震えてくる。
『愛してるよ』
ホーリーの声が頭をかすめた。
それと同時に、腟内に溜まっていた体液が内腿につつ、と流れ出たのを感じて顔がかあっと熱くなる。
(純潔を失った。 そして私は、昨日死ぬはずだった……?)
いま一つ実感は湧かないけれど、実際に私は生きている。
これからの自分の運命はホーリーが握っているということだろうか? 少しの間サラが考え込んだ。
サラはホーリーのことを思い浮かべた。
ひょろっとして背が高く、男性というよりも………少年がそのまま成長したような、不思議な雰囲気を身にまとっていた。
ざんばらに切った髪は、後ろで括ろうとして紐と一緒に絡まっているようだ。
長い前髪のお陰で、せっかくの、一見優しそうな彼の黒目がちの瞳が隠れてしまっていた。
あれをきちんとして目の下の不健康そうなクマをどうにかしたら、女性の目を引きそうな外見になるのかもしれない。
彼は気味が悪いし不可解なことを言ったりひどいことをする。
それに加えて少女は、表情とともに繊細に移り変わる、青年の不安定な性質に気付いていた。
………そのせいで、余計に得体の知れない怖さを感じる。
「……しっかりしなきゃ」
自分を鼓舞するべく呟くと、サラは勢いよく顔を洗った。