第10章 マッチ売りの少女…12月31日♥
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気付けば空が白み始めていた。
(どれだけ経ったのかしら…)
ホーリーはサラの隣で寝息を立てて寝ていたが、それなのにサラは動けずにいた。
『僕から逃げたらどうなるか、分かってるよね…?』
それを考えると怖かったからだ。
そういえばホーリーは、寝入る直前、こんなことも言っていた。
『本当は君は大みそかの晩に死んじゃうはずだったんだけどねえ……知らずに死ぬのなんて、可哀想だよねえ』
(そんなの…もうどうでも、いいけど……)
人が死ぬ前には、死神に襲われるものなのかしら。 そんなことをぼんやり思った。
信仰心の厚い少女にとって、教会できつく禁止されている姦淫を働いてしまった事実。
それは下手をすると死よりも耐えがたい失望だった。
「…っつ!」
起き上がろうとすると全身にズキッとした痛みが走る。
「んん…サラちゃん…?」
息を呑んでいるサラの視線に気付き、目覚めたホーリーが腕を伸ばして大きな欠伸をする。
「ふあああ…コッチの世界って眠くなるんだねえ。 でも気持ちがいいや」
「そ…うなの……」
(私が今感じているのは、苦痛でしかないわ…)
「サラちゃんはさあ、僕と会えて幸せかい?」
ちらと少女を見やった彼があんまり思いがけないことを言うものだから、サラは驚きのあまり目をしばたたかせた。
「……は…え、ええ…?」
「そっかあ、嬉しいなああ。うふふふ」
ホーリーは照れたように笑いサラの手を取り、甲にキスをした。
「良かったあ……正直、かなり緊張しちゃったからさあ」
「………」
「サラちゃん、愛してるよ」
そう言うとホーリーは起き上がってサラの頬に口づけをした。
明るい所で見る彼の腕は意外に華奢だった。
それよりもそこには一面、無数の切り傷の痕があった。
(愛………?)
少女はかすかに微笑んだ。
それが精一杯だった。