第9章 閑話シンデレラ…舞踏会編♥♥
「小義姉さん」
うわの空でいた妹がはっと我に返った。
「あら? どうしたの、シンデレラ」
最近のシンデレラは以前より覇気のなさはましになったようだ。
ただし外出しても、女性を連れて帰るほどには復活していないらしい。
「久しぶりに熊でも獲りにいかないか」
(クマデモトリニイカナイカ………?)
姉が怪訝な顔をし、尋ねられた妹は頬に指を沿わせて考え込む。
「んん、ンー? まあ、時節的にちょうどいいかもね? 子育ての時期だから、メスはちょっと気が立ってるかもだけど。 姉さん、いいかしら。 数日程家を空けても」
妹弟が、姉の方に顔を向けた。
普段ならば『はあっ!? 危険だから止めなさい』と切って捨てるところだ。
だが内心シンデレラを大いに心配していた姉は、そこまで気が回らなかった。
弟が最近かつてない穏やかな表情をして、おそらく気分転換をしようとした『クマデモトリニイカナイカ』。
それは姉の頭の中で「街に買い物でもしに行かないか」などという普通の言葉に変換された。
それで、彼女はつい真面目に答えた。
「く、熊だと毛皮は高く売れるし……? 最近現金が手元になくて困っていたから、構わないわよ」
「数日で戻るわね」と妹が言ったので、二人が準備をしている間に、姉は鞄がパンパンになるほどのお弁当を大急ぎで拵え、玄関先で二人に手を振って見送る。
「気を付けてね! シンデレラ、顔にだけは怪我はしないように!!」
(………シンデレラが元気になってくれればいいのだけど)
姉は胸元で両手を握って祈った。
これでも何だかんだいって弟が可愛くて仕方がないのである。