第9章 閑話シンデレラ…舞踏会編♥♥
シンデレラの五つ上の姉が、浴室の扉を響き渡るような音を立てて開けた。
「シンデレラっ! 納屋の掃除は終わったの? 水汲みがまだじゃないの」
豪華で広々とした浴場が目の前に広がる。
壁や天井には美しい大理石が施され、そこには多数の煌めく灯りが並べられていた。
大きな円形の浴槽から湯気が立ち上り、その輝きが灯りに反射している。
彼女の目に飛び込んできたものは、その輝きに負けないくらいのわが弟が、楽しげに女と戯れる姿だった。
「ああ、大義姉さん。 少しばかり朝湯が長引いてしまったかな。 ほら、彼女たちがなかなか離れてくれないものだから」
浴槽に後ろ向きで浸かっていた弟が姉を振り向いて言った。
彼女たち、とは裸身を晒して彼にしなだれかかっている二人の見知らぬ若い女のことである。
「シンデレラ様あ。 御用事ならば、私たちがいたします」
「そうですわ。 この御手が怪我でもしたら大変ですもの」
女がうやうやしくシンデレラの手を取り、指先にそっと口付けを落とした。
毎度毎度のことながら、姉は軽く目眩を覚えた。
三年前亡くなったシンデレラの父親は結構な資産家だった。
彼や姉が子供の頃に両親が再婚をしてから、家の暮らし向きは良くなったものの。
実は父親は借金を抱えていたようであり、家は元の貧乏生活に逆戻り。
生前の父親が購入した豪邸は実質維持するだけで手一杯の、空っぽの状態である。
かくして寝込みがちの母と姉二人、そして亡き父親の連れ子であるシンデレラとの生活が始まったわけだが。