第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
なにかの話の続きのように言われるも、マドカにはまるで彼が別人のように思えた。
(傷付いている………?)
俯いた、彼の顔はすぐ近くにあった。
やる気無く胸に置かれた手を、彼の痛そうに寄せられた眉に気を取られて振り払えない。
「な…何を言ってるのか………分かんないわ、フリン」
「僕がきみの最初の男になるから」
フリンが彼女の首すじに唇をつけて後ろに倒した。
「あっ……待っ……!」
視界が流れて天井が映り、それでマドカはようやく事態を理解した。
フリンの首元からは男の匂いがした。
抱き込まれて、自分の体に重みが乗る。
耳や首すじ、頬。
それから体重をかけられた衣擦れに、肌を走る感覚が強過ぎて彼女は懇願した。
「嫌だ。 お願い、あんたとはしたくない」
こんな彼を見たくなかった。
混乱した頭で口走ったのはただそれだけだった。
マドカの頬に涙が伝う。
嫌だと繰り返す声はいつしか嗚咽に変わり、それでも彼女を包んでいた衣服は無慈悲に剥ぎ取られた。
「う、うっ…やだよう」
泣きながら、マドカは初めて男からされた時のことを思い出していた。
こんな風にひどく惨めな気持ちだったのを今さらのように思い出していた。
ただしフリンはマドカを押さえ付けるようなことはしなかった。
『なあに。 ちっと我慢してれば良くなる』
そうも言わなかった。