第5章 非日常にさようなら
「今は殺しの仕事中じゃないでしょ」
「連中はそういう捉え方ができねぇの。少しでも自分に危害が及ぶのならそうなる前に手を切るか排除する」
「……だからたくさん恨みを買うのね」
「思い当たる節があったか?」
「私の父も叔父達もすごく嫌われてるもの。身内を出し抜くとかも日常茶飯事だし。年中行事で一族が集まる時なんて腹の探り合いばかりしてるわ」
そういうことをしている者は大抵人望がなく、利害が一致した時にしか協力しない。
なんなら廊下ですれ違った時に挨拶しなかったから気に入らないとして一度協力するフリをして裏切るなんてこともある。
「自分のことしか考えてないのよ、あの人達。本当狭量というか子供っぽいというか……恥ずかしくないのかしら」
伽那夛が五条家の悪口を言い出したちょうどその時、個室のドアが開き、和服姿の男が3人入ってきた。
噂をすればなんとやら、だ。
伽那夛が嫌そうに目を細めたのを見て、甚爾も入ってきたのが五条家の人間だと察しがつく。
男達は伽那夛には見向きもせず、甚爾を軽蔑するように睨んで言い放った。
「ご苦労だった。さぁ、伽那夛様から離れなさい」
まぁそんな感じだわな。
こういう扱いはある程度予想していた。
別に慣れているし、何を思うこともない。
支払いについてもこの個室に通されて少しした時に孔から入金完了のメッセージが入っている。
これで面倒だらけの不慣れなお守りは終わり、後は帰るだけだ。
……と思っていたのだが、
「何よ、その言い方。大人として恥ずかしくないの?」