第5章 非日常にさようなら
伽那夛は車中であくびをしながら目を覚ましていた。
「ふあぁ……」
いつの間にか寝ちゃった。
いつもなら昼寝することなんてないのに。
車が停まっているのは小さな売店の駐車場。
運転していたはずの甚爾は何か買いにいっているのか、車中には自分1人しかいない。
まぁ、ずっと一緒なのも堅苦しいし、態度はともかく、彼は約束事はちゃんと守りそうだし、いいんだけど。
それより伽那夛は目の前にある売店が気になって仕方なかった。
なんたってこういう売店、いわゆるコンビニエンスストアを見たのは初めてだったから。
甚爾が自由時間なら自分だって自由時間にしていいはず。
そう自分を納得させて車を降り、小走りにコンビニの自動ドアを通るとピロンピロンと音が鳴ってびっくりする。
「いらっしゃいませ〜」
コーヒーサーバーに隠れた向こう側から店員らしき声。
……成程、これなら店員がずっと入口を気にしていなくてもお客が来たことが分かるというわけだ。
気を取り直して店内を見渡す。
窓際には雑誌が並び、棚にはお菓子やカップ麺、菓子パンといった食べ物以外に文房具や日用品などなど……
奥の壁はずらりと飲料の冷蔵庫、そこを曲がるとお弁当やスイーツが並ぶ。
一番奥は棚ではなくてアイスや氷が入っている冷凍庫だ。
「へぇ、いろんな味があるのね……」
スタンダードなバニラやチョコレートは勿論のこと、ストロベリーチーズケーキやキャラメルファッジにコーンポタージュ……
「……うん?」
読み間違えたかと思って目を擦ってもう一度見てみる。
しかしそこにあるのはまごうことなき“コーンポタージュ味”の文字。
コ、コーンポタージュ味って何!?
これってアイス……なのよね?
コーンポタージュをそのまま凍らせたってこと!?
温めてスープとして食べるものとか?
でもパッケージは棒付きのアイスよ?
ど、どういうことなの!?
目を白黒させていると他の客がアイスを買いにきたので、冷やかしだけの伽那夛は引き下がり、他の棚を見に行く。