第5章 非日常にさようなら
伽那夛には懸賞金が懸けられていると孔から聞いていたが、予想外の大胆さだ。
伽那夛自身が1人でもそこそこ戦えるため、襲撃するにはリスクが伴う。
だから彼女が警戒しない人物を買収しようということか。
理に適った手段ではある。
請け負う側にとって死んでいても良いというのもやりやすい。
「成程、そう来るか」
「何の話だ?」
「別に。オマエらには関係ねぇ話だよ」
もし五条伽那夛が御三家のテンプレのような人間だったら、この話を受けていたかもしれない。
だが……
―あなた、なんて名前なの?―
―……初めてだったの、そういうこと言われたのが―
―それじゃあ私が納得できなかったの。あなたのことを一方的に決めつけて好き勝手言って……どっちが分からずやだって話になるじゃない―
出会って数時間しか経っていないが、術師とは思えない程、素直で真面目。
感情を隠すことなく顔に出す。
何より御三家出身にもかかわらず、甚爾を人として見る伽那夛。
引き受けた仕事は原則完遂する、そうでなければ裏社会で仕事を取ることはできない。
……なんて建前を抜きにしてもこの男達に彼女を渡す気は起きなかった。