第5章 非日常にさようなら
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「もう一回休憩挟んだら30分くらいでオマエを引き渡す指定場所だ」
「……」
返事がないので助手席を横目で見ると、伽那夛はすぅすぅと寝息を立てていた。
朝から呪詛師に追われ、逃げる途中で呪骸に連れ去られ、目の前で人が殺される現場を見た上にその殺し屋に送り届けられることになり、その後襲撃してきた呪詛師7人を1人で返り討ち……
そりゃ疲れたか。
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甚爾はなんとなく目に留まったコンビニの駐車場に車を停め、寝入っている伽那夛を残して車を降りる。
そのままコンビニへ……は入らず、歩道に出て歩きながら背後の気配を探った。
競馬場で孔との電話を切った時くらいから誰かに後をつけられている。
伽那夛のいる車の方には向かわないことから狙いは彼女ではなく自分だ。
普段から仕事は1人でこなしているため、恨みを買っていても、手がかり無しで自分に辿り着くとは考えにくい。
まして顔見知りでもないはず……
目的は何だ?
人目につかない路地裏を少し進んで後ろに向き直ると、足早に入ってきた追手とちょうど目が合った。
痩せ型のスーツの男2人、ここに入ってきた時も知らぬ風を装っていた。
相当尾行に手慣れている。
裏社会の人間か、それとも探偵か……
いずれにしても甚爾の感覚は欺けない。
「何だよ、オマエら。男のストーカーして楽しいか?」
「!、違うんだ。アンタに危害を加えるつもりはない。ちょっとした取引の話をしたくて」
「あいにく直で仕事は取らない主義でね」
「待て、話を聞いてくれ。アンタにとって決して悪くない取引のはずだ」
無視してもよかったがしつこく追って来られても面倒だ。
「ハァ……聞くだけ聞いてやるよ」
「五条伽那夛を渡してくれ。死体なら1000万、生きていれば3000万」