第4章 息抜き
『……五条家には五条伽那夛本人で間違いないと伝えとく。慣れねぇお守りもあと少しだな』
「ああ、じゃあ予定通り引き渡し場所まで連れて行く。順調に行けば着くのは夕方くらいか」
伽那夛がトイレに行ってるのを待つ間、甚爾は先に出た孔と電話で最終確認をしていた。
『最後に少し注意していてほしいことがある』
「なんだよ、面倒事か?」
『五条悟には遠く及ばないが、あの子にも懸賞金が懸けられてる。そこの競馬場に着く前に一度襲撃されたんだろ、まだ刺客がいるかもしれない』
五条家の術師でしかもまだ少女、五条悟に対する人質以外にもいろいろと利用用途は考えられる。
甚爾もそれは思い当たったが、彼女がおとなしく捕まる程お淑やかではないこともまた事実だった。
「見つけたら片っ端からアイツが蹴飛ばしそうだけどな」
『だからだよ、想定外に強い呪詛師なんて出てきてみろ、あの子の手に負えねーだろ』
気も強ければそこそこ実力もある、それが原因で知らぬ間に自信過剰になって負ける―……
五条悟のような他と一線を画すまでの実力ではないため、十分に考えられる事態だ。
「分かった。その辺は注意しとく」
……と一応は答えたものの、甚爾の常人を遥かに凌ぐ感覚を欺いて伽那夛に近づける輩がいるとも考えにくい。
しかし、その後しばらく待っても伽那夛は戻ってこなかった。
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